しかし、藤崎雪哉は恥じることを全く知らなかった。
「一日一回だとしても、一ヶ月でどれだけ不足しているか分かる?」
彼女はいつも数日帰ってきては、また一ヶ月ほど出かけてしまう。
工藤みやびは歯を食いしばり、真剣な口調で諭した。
「過度な欲望は体に悪いわ。若いうちから体を使い果たさないでよ?」
藤崎雪哉は表面上は真面目そうだったが、口では節操なくからかった。
「君に使い果たされたいんだ」
工藤みやび:「……」
なぜ彼女はここに来たのだろう、そのまま行けばよかったのに?
二人は寝室には戻らず、書斎でキスをしたり抱き合ったり話したりしただけだった。
マネージャーから催促の電話がかかってきて、藤崎雪哉はようやく彼女を階下まで送った。階下では椅子に縛り付けられて拷問を受けていた人物が、藤崎千明から藤崎千颯に変わっていた。
「兄さん、助けてくれ!助けてくれ!」
「お義姉さん、助けてください!!」
藤崎千颯は二人が階下に降りてくるのを見るなり、声を張り上げて助けを求めた。
藤崎雪哉は見向きもせず、工藤みやびはちらりと見ただけで、何も聞きたくなかった。
藤崎雪哉打倒小分隊を結成したのに、実際は彼ら自身がお互いを陥れることの方が多かった。
彼らの奇妙な自滅行為にはもう慣れていて、少しも同情する気にはなれなかった。
工藤みやびは石橋林人の催促を受けて、メイクとスタイリングをしに急いだ。
ドレスはミラノから持ち帰ったMGの新作だった。
石橋林人はスタイリストが彼女にメイクをするのを待ちながら、指示を出した。
「堀夏縁の契約解除のせいで、記者たちがMGの代理契約について質問するかもしれないけど、今日は『追跡の眼』の初公開だから、そういう質問には答えないで、話題を映画に戻すようにして」
「わかったわ」工藤みやびは答えた。
もし彼女がMGの代理契約争いについての質問に正面から答えれば、メディアはゴシップを重点的に報道し、『追跡の眼』の公開について報道しなくなるだろう。
「とにかく記者の質問応答では、何を聞かれても、答えの重点は映画にすること」石橋林人は念を押した。
以前の『長風』では主にインタビューは主演の男女が受けていたので、彼女は記者とのやり取りの経験が少なかった。