工藤みやびは意見を述べず、アシスタントを二言三言慰めてから、服を着替えてインタビュー映像の撮影の準備に出かけた。
撮影を待つ休憩室に着くと、広告代表者の面接に参加する人が少なくなく、しかもほとんどがアジア人の顔だということに気づいた。
アジア数カ国のトップスター、そして何人かの背の高いスーパーモデルたち。
石橋林人は見れば見るほど、心配が募った。競争が激しいことは知っていたが、こんなに激しいとは思わなかった。
「まずいな、これじゃ望みがないよ。あっちに来ている人たちは、誰もが何個もの賞を取っているじゃないか。」
彼のタレントは美しいが、現在の知名度はそれほど高くなく、賞に至っては一つも持っていない。
工藤みやびは一瞥して、確かに彼女より名声のある人ばかりだと確認した。
石橋林人は彼女がアクセサリーを一切つけていないことに気づき、眉をひそめて言った。
「おい、クラシックでエレガントで高貴な雰囲気を表現するって言ったじゃないか。苦労して借りてきたアクセサリーをつけないの?」
その場にいる誰もが二つ三つの高価なアクセサリーを身につけているのに、彼女は一つもつけずに服を着て、髪をまとめただけで来ていた。
「これは服の撮影であって、ジュエリーの撮影じゃないわ」と工藤みやびは言った。
石橋林人は考えてみると、確かにそれもそうだと思った。ジュエリーをつけると確かに主役を奪ってしまう感じになる。
「あのさ...大社長に電話して、頼み込んでみない?」
工藤みやびは彼を横目で見て、「頼らないわ」と言った。
一度彼に頼ってしまえば、将来どんな大きな成功を収めても、それは彼のコネのおかげであって、自分の実力ではないということになってしまう。
「競争がこんなに激しくて、あなたの映画もまだ公開されていないし、ここにいる誰もがあなたより格上だよ。コネを使わなければ勝ち取れないよ」
石橋林人はアシスタントを遠ざけ、小声で彼女に頼んだ。
「ねえ、以前誰かさんが私に、この業界では身を清く保ち、安易にコネを頼って出世しないようにと言ったのは誰だったかしら?」と工藤みやびは呆れて尋ねた。
「この大社長のコネが、普通のコネと同じだと思う?」と石橋林人は小声で言った。
以前は彼女と大社長の関係を知らなかったので、この業界でコネを頼ることに賛成しなかった。