スイス、ロカルノの町、景色は美しい。
「ロカルノ映画祭」の開催により、小さな町は特別に賑やかになっていた。
竹内薫乃を平手打ちした件が国内で大騒ぎになっていたが、工藤みやび一行はこちらでは全く影響を受けていなかった。
こちらに到着して少し休んだ後、映画祭でのプレミア上映の準備を確認した。
すべての手配が整ってから、ようやく石橋林人に電話をかけて国内の状況を尋ねた。
「今どんな状況?」
石橋林人は会社に座り、果物を食べながら彼女に言った。
「ネット全体で抗議運動が起きて、あなたにエンターテイメント業界から出て行けと言い、各映画館に私たちの上映をキャンセルするよう要求している。」
工藤みやびは全く驚かなかった。「どれくらいキャンセルされた?」
石橋林人はリンゴをかじる音を立てながら言った。
「今、全国的に藤崎グループ傘下の映画館を除いて、他のほとんどが私たちの上映をキャンセルして、代わりに『あの青春、君と出会った』を上映している。」
「竹内永民はどう?見つかった?」工藤みやびは尋ねた。
「見つかったよ。もう彼と話をしてきた。楽しみにしていてくれ。」石橋林人は興奮して言った。
竹内薫乃たちは自分たちが勝ったと思っているだろうが、彼らのために驚天動地の面目丸つぶれ大作戦を準備していることを知らないのだ。
工藤みやびは満足げに微笑んだ。この竹内永民を見つけさえすれば、あの録音と合わせて。
これからは、彼らが逆転して恥をかかせる番だ。
当時、中山美琴は人目を欺くために、竹内永民と付き合っているふりをし、さらに竹内薫乃と竹内彩は彼女と竹内永民の間に生まれた子供だと公言していた。
しかし、竹内永民は彼女と竹内家成の不倫関係を隠すためにお金をもらっていたのだ。
中山美琴と竹内家成の不倫関係、そして竹内薫乃が誰の娘なのか、これらすべてを竹内永民は知り尽くしていた。
竹内薫乃は彼女を刺激しに来て、彼女に殴らせることで世論を操作し、エンターテイメント業界から追い出せると思っていた。
しかし、そんな拙い策略など、彼女は眼中にない。
彼女が手間をかけて付き合ったのは、それが彼らの映画の話題作りになり、独創的な宣伝となって、興行収入を刺激するだけのことだった。
「人が見つかったなら、あとは君の腕次第だ。」