「ありがとう」工藤みやびは優しく微笑んだ。
ウェディングドレスは美しかったが、藤崎家の年長者たちの工藤家とドランス家に対する態度を考えると、彼女がこのドレスを着て結婚式を挙げる機会があるかどうか分からなかった。
「藤崎夫人、他に修正が必要な箇所はありますか?」店員はノートを持って記録する準備をしていた。
工藤みやびは注意深く見て、首を振った。
「ありません、完璧です。とても気に入りました」
メリンという完璧主義者が、自分のデザインに欠点があることを許すはずがない。
「メリン様がこれを見たら、あなたがこのデザインをこんなに美しく着こなしているのを見て、きっととても喜ぶでしょう」店員は心から言った。
メリンのデザインは美しいが、まるで妖精のためにデザインされたようで、彼女のように着こなして魅力的に見せられる人はほとんどいなかった。
工藤みやびは少し考えて言った。
「彼を呼んでいただけますか?」
店員は考えてから、笑顔で提案した。
「結婚式であなたがウェディングドレスを着ている姿を見せる方が、もっと良いのではないですか?」
工藤みやび:「待ちきれないんです。今すぐ見てもらいたいんです」
店員は笑いながら、彼女の願いに従って応接室に人を呼びに行った。
しかし、藤崎雪哉は入ってくることを拒否した。
工藤みやびはウェディングドレスを着ていたので外に出るのも不便で、店員に写真を撮ってもらい、それから着替えた。
彼女が応接室に行くと、藤崎雪哉がソファに座って経済新聞を読んでいたが、彼女を見るとすぐに新聞を閉じて置いた。
「満足した?」
「なぜ入ってこなかったの?」工藤みやびは不満そうな顔で尋ねた。
「結婚式であなたがウェディングドレスを着ている姿を見たいんだ」藤崎雪哉は言った。
これだけ長く待ったのだから、あと数ヶ月待つのも大したことはない。
「そう」工藤みやびは短く返事をし、バッグを取って急かした。「遅くなったわ、帰りましょう」
藤崎雪哉は自然に彼女の手を取り、車に乗って尋ねた。
「君たちの映画は、誕生日前にプロモーションが終わる?」
工藤みやびは少し驚いて、頷いた。
「だいたいそうなるわ」
あっという間に、彼女の20歳の誕生日まであと2ヶ月しかなかった。