第632章 荒木雅が竹内薫乃を平手打ちする

テレビ局のスタッフも、彼女の横柄な態度に驚いた様子で見つめていた。

「荒木さん、どんな事情があるにしても、手を出して人を殴るべきではないでしょう？」

番組収録前は、彼女の態度はとても親しみやすかったのに、まさか手を出して人を殴るとは思わなかった。

やはり、芸能人はファンの前では一つの顔を見せ、裏では別の顔を持っているものだ。

竹内薫乃のマネージャーは、憎々しげな表情で彼女を見つめていた。

「荒木雅、弁護士からの通告を待っていなさい。」

そう言うと、テレビ局のスタッフの助けを借りて、竹内を支えながら病院へ連れて行った。

ちょうどテレビ局の幹部と話し合っていた石橋林人は、アシスタントの岡崎からのメッセージを受け取り、急いでやって来た。

道中、テレビ局のスタッフたちが化粧室の外で議論しているのを見かけた。

「君は竹内薫乃を殴ったのか？」石橋は息を切らしながら尋ねた。

「殴ったわ」工藤みやびは平然と頷いた。

石橋は外で指を指して話している人々を見て、言った。

「わかった、行こう。車に乗ってから話そう。」

彼女は本当に殴ったのだ、それもテレビ局で人を殴った。

以前はこんなに衝動的で暴力的な人ではなかったのに、今日はどうして手を出したのだろう？

一行が化粧室を出ると、テレビ局のスタッフたちに見られながら歩いた。

石橋は笑顔を作りながら、「申し訳ありません、ご迷惑をおかけして、申し訳ありません...」と謝った。

しかし、車に戻るとすぐに彼は取り乱し、将来の社長夫人であることも気にせずに言った。

「いったい何をしているんだ？人を殴るなら、せめて誰も見ていない場所でやるべきだろう。テレビ局であんなに大勢の前で殴るなんて、頭がおかしくなったのか？」

工藤みやびは無関心そうに彼を横目で見て、「もう殴ってしまったことだし、今さらそんなこと言っても意味ないでしょ？」

「じゃあ、どれくらいひどく殴ったんだ？」石橋は尋ねた。

工藤みやびが黙っていたので、彼はアシスタントの岡崎の方を見た。

岡崎は恐る恐る答えた。「竹内薫乃の顔は腫れていて、血も吐いていました。」

石橋は額に手を当て、工藤みやびを指差す手が震えていた。

「君は...君は...」

人を殴っただけでなく、あんなに強く殴るなんて。