第644章 堀夏縁を毎日恐怖の中で生きさせる

同じホテル、別の部屋。

工藤みやびはようやく忙しい仕事を終えて部屋に戻り、真っ先に藤崎雪哉に電話をかけた。

二人が甘い会話を交わしている最中、部屋のドアベルが鳴った。

彼女がドアを開けると、堀夏縁のマネージャーだった。

「何か用?」

「荒木さん、明日時間ありますか?堀さんがコーヒーをご一緒したいとのことです」マネージャーは友好的な態度で堀夏縁の意向を伝えた。

工藤みやびは冷ややかに笑った。「親しくないし、暇もない」

そう言って、ドアを閉めた。

彼女と堀夏縁の関係は、一緒にコーヒーを飲むほど良好ではなかった。

さっき三浦星安が、堀夏縁側の人間が彼らの試写会に参加していたのを見たと言っていた。

おそらく堀夏縁は彼らの映画に殺人と心臓摘出のシーンがあることを知り、不安になって彼女が何か知っているのではないかと恐れているのだろう。

だからコーヒーに誘って、ついでに彼女を探りたいのだろう。

堀夏縁のマネージャーはバタンと閉まったドアの前で呆然とした。彼女がこれほどあっさりと断るとは全く予想していなかった。

そして、堀夏縁に断られたことを伝えに戻った。

堀夏縁は心の中では怒りを感じていたが、気になる疑問を捨て切れなかった。

そこで翌日の昼、荒木雅が坂口飛羽たちとホテルのレストランで食事をしているところに近づいた。

「荒木さん、少しお話する時間ありますか?」

「ないわ」工藤みやびは笑顔で断った。

ちょうど昼食を食べ終えたところで、彼女と話すなんて、せっかく食べた食事を吐き出しそうで気持ち悪くなりそうだった。

「数分だけでも、時間はあるでしょう」

堀夏縁は彼女の拒否にもめげず、どうしても話したいという決意を固めていた。

工藤みやびは坂口飛羽たちを見て言った。

「先に行っていて。トップ女優の堀さんと少し話すから」

映画にそんなシーンがあるというだけで、落ち着かないほど不安になるなんて。

もし彼女が実際に映画を見たら、きっと夜も眠れないほど恐れるだろう。

坂口飛羽と小田澄玲は先に行ったが、三浦星安は少し離れたところに座って待っていた。

堀夏縁は彼らが去ったのを見て、ようやく席に着いた。

「すみません、昨晩マネージャーを遣わしたのに断られてしまって、こんな形でお会いするしかなくて」