空港で起きたことすべてに、小田澄玲と坂口飛羽はまだ反応しきれていなかった。
しかし、工藤みやびはこのような結果になることを予想していたので、冷静かつ余裕を持って対応した。
車に乗るとすぐに、彼女は藤崎雪哉にLINEを送った。
[藤崎おじさん、帰ってきましたよ。]
おそらく今は仕事で忙しいか、会議中だろうと思い、直接電話はせず、自分が戻ってきたことを報告するだけのメッセージを送った。
2分後、藤崎雪哉から電話がかかってきた。
「今どこにいる?」
「試写会の近くのホテルに向かっています。時間がなくて、家に帰れそうにないんです」工藤みやびはため息をついた。
藤崎雪哉:「何時に終わる?」
工藤みやびは少し考えてから言った。
「12時前には帰れると思います」
試写会の後にはインタビューもあるし、以前の女優時代と違って監督としては、その後の宣伝も確認しなければならない。
さらに、以前各映画館が『微睡の淵』の上映枠を取り消したこともあり、3日後に正式公開となるため、今日中にこれらすべてを手配しなければならなかった。
「迎えに行こうか?」藤崎雪哉が尋ねた。
「大丈夫です。三の若様と一緒に帰りますから」工藤みやびは急いで言った。
彼も最近忙しい仕事が多く、彼女を迎えに来るとなると時間を無駄にしてしまう。
藤崎雪哉は少し考えて、「わかった」と言った。
今夜、藤崎千颯に仕事を早めに引き継いでおけば、明日は少し遅く会社に行けるだろう。
「じゃあ、夜に家で会いましょう」工藤みやびは別れを告げ、電話を切った。
彼女がホテルに着くと、石橋林人はすでに宣伝チームを連れてそこで待っていた。彼女を見るなり、手柄を自慢するように言った。
「どうだ、完璧に解決したろう」
工藤みやびは歩きながら尋ねた。「今、映画の上映枠はどうなっている?」
「前はみんな偉そうに俺たちの上映枠を取り消していたのに、今じゃ孫のように頭を下げて俺たちの映画を上映させてくれと頼んできている。もう手配させているところだ」石橋林人は得意げに言った。
以前、彼らは竹内薫乃のせいで次々と上映枠を取り消し、中には二度と彼らの映画を上映しないと言う者もいた。
昨夜から、みんな土下座するように『微睡の淵』の上映枠を求めてきて、さらに自ら『あの青春、君と出会った』の上映枠を取り消し始めた。