第692章 伝説の影后を打ち負かす2

ロカルノ映画祭の当日の昼、工藤みやびたちはようやくロカルノの町に到着した。

昼食を済ませた後、彼女はすぐに二時間ほど休息を取った。

午後三時、石橋林人がスタイリストとマーティン・グリーンが空輸してきたドレスを持って、彼女のスタイリングをしに来た。

「あらまあ、なんてこと、あなたのこのクマは……」

映画祭のレッドカーペットはいつも女優たちが華やかさを競う場所だが、彼女のクマはパンダに匹敵するほどで、このままではどうやって会場で華を咲かせられるだろうか。

「最近忙しくて、クマができないわけないでしょ?」工藤みやびは一行を部屋に入れながら、眠たそうにあくびをした。

映画が公開されてから、彼女は一度もまともに眠れていなかった。クマができないはずがない。

「急いで、フェイスマスクとアイマスクを貼って……」

石橋林人は部屋に入るなり指示した。

工藤みやびは椅子に腰掛け、二人のスタイリストに任せた。

石橋林人と三浦星安はそれぞれMGのオートクチュールドレスを持って、尋ねた。

「ドレスが二着届いたわ、一着は人目を引く赤、もう一着はシンプルでエレガントな純白、どちらを着る?」

工藤みやびはちらりと見て、「白の方にするわ」と言った。

石橋林人は自分が持っている艶やかな赤いドレスを掲げて、「赤の方がいいわよ、あなたは肌が白いから、赤を着ると絶対に一番映えるわ」

白いドレスもエレガントで気品があるが、赤ほど艶やかで目を引くものではない。レッドカーペットのような場所では、もちろん最も美しい姿を見せるべきだ。

工藤みやびは彼を一瞥して、「バックレスドレスよ、あなたが私にこれを着せて出かけさせるなら、あなたの上司に確認した?」

赤いドレスは確かに目を引くが、背中が全部露出している。

もちろんレッドカーペットでは多くのスターが胸や脚を露出して注目を集めるが、彼女がこれを着て出かければ、藤崎雪哉がどれだけ不満を持つか。

最近彼女はとても忙しく、彼を機嫌取りする時間なんてない。

石橋林人はドレスの背中を見て、すぐに横のソファに置いた。

「やっぱり白を着ましょう、白は高貴で純粋だわ」

後でマーティンに連絡して、今後はこういう露出の多いドレスを送らないようにしなければ。彼女自身が着ても構わなくても、社長が許さないのだから。