第50章 松本優が階段から落ちる！

血はまだ止まらずに流れ続け、神崎弥香は階段の入り口で呆然と立ち尽くし、頭の中は真っ白になった。彼女は信じられなかった。力を入れたわけでもないのに、松本優はそのまま転げ落ちてしまったのだ。

神崎翔は物音を聞いて駆けつけた。彼は血だまりの中で呻いている松本優と、階段の入り口に立っている神崎弥香を見て、瞬時に状況を理解した。彼の顔色が急変し、目には血に飢えた怒りが浮かんだ。

彼は不気味に弥香を見上げ、瞳の奥は墨のように深かった。「お前が優を突き落としたのか？」

神崎弥香は神崎翔を見つめ、周囲の温度が一瞬でゼロまで下がったように感じた。彼の声は低く掠れ、嵐が来る前の前奏のようだった。

神崎弥香は無意識に首を横に振り、ぼんやりと説明した。「私、力なんて入れてない、彼女が突然私を掴んで離さなくて、ただ彼女を押しのけようとしただけなのに、思いがけず彼女が転んでしまったの。」

松本優は顔を上げて弥香を見た。彼女はお腹を押さえ、苦痛に満ちた表情で呻いた。「お義姉さん、私は子供をあなたに育ててもらってもいいと言ったのに、どうして私と子供を死地に追いやるの？私が必死に頼んだのに、あなたは私を階段から突き落とした。本当に冷酷な人ね。そうなら、もうあなたのために隠す必要もないわ。あなたはとっくに私の妊娠を調べさせて、それから私を騙して帰国させ、中絶を強要したわ。病院で同意書にサインするよう迫ったけど、幸い私は逃げ出して難を逃れた。私は子供を妊娠したことが悪いと思って、あなたのために黙っていたのに、今日はお兄さんの前でも私を害そうとするなんて。お義姉さん、あなたは本当に冷酷ね！」

神崎弥香はようやく、前回松本優が彼女に中絶に付き添わせようとした理由を理解した。それは彼女が前もって計画していたことで、目的は弥香を陥れることだったのだ。彼女は怒りの表情で言った。「松本優、何を言い出すの？前回は明らかにあなたが私を騙して、中絶に付き添わせたじゃない！あなたは言ったわ、あなたが妊娠したのは…」

「お義姉さん、中絶の書類はまだ持っているわ。そこにはあなたの名前が書かれているの。こんな状況になっても、まだ言い逃れするなんて思わなかったわ。」松本優はタイミングよく割り込んだ。

神崎弥香はその場に立ち尽くし、松本優の計算高さに言葉を失った。彼女は完全に弁解の余地がなかった。