第117章 公衆の面前で愛を見せびらかす!

これは彼らが初めて冷酷な社長の笑顔を見た瞬間だった。今の彼の様子は普段とは全く別人のようだった。

彼らの頭上で雷が鳴り響いたかのように、目が一瞬で大きく見開かれた。

噂話や八卦を楽しむのは日本人の血に刻まれた遺伝子だ。彼らは表面上は何も変わらないふりをしていたが、思わず耳を澄まし、目を離さずに彼を見つめていた。

三神律は表情を和らげ、携帯電話に向かって優しく甘えるように言った。「海浜市に帰ったら私のことを忘れてしまったのかと思ったよ」

三神律の声には、かすかに聞き取れるほどの小さな不満が混じっていて、相手の罪を責めているようだった。

彼らはその様子を見て、顔を見合わせ、再び呆然とした。

これが、あの冷酷無比で近寄りがたい都会の御曹司なのだろうか?まるで恋に落ちた青臭い若者じゃないか!

三神律が恋愛していることは三神財団全体で知られていた。噂によれば彼はこの恋愛相手に非常に心を砕いているとのことだったが、彼らが今目の当たりにした彼の表情や態度を見ても、彼らはまだ信じられなかった。これが彼らの知っている冷酷な社長と同一人物だとは。

彼らは息を殺して、二人の会話を盗み聞きし続けた。

神崎弥香は当然、三神律の言葉に含まれる不満を聞き取った。彼女は思わず口角を上げ、真剣に言った。「三神律、私はこうして時間ができたらすぐにあなたに電話しているじゃない。もう怒らないで」

神崎弥香は何故か、普通の口調のつもりが、意外にも甘えた口調になっていた。

三神律はもちろんそれを喜び、心躍らせて思わず尋ねた。「じゃあ、海浜市に帰ってから、私のこと考えた?」

「あなたが先に言って。私のこと考えた?」神崎弥香は彼の質問に答えず、逆に問い返した。

三神律の瞳は水のように優しかった。「もちろん、いつも君のことを考えているよ!」

この瞬間、彼の目には限りない思いが宿り、心の中の愛情はもはや抑えられないほどに広がっていた。

画面の中の数人は三神律のこの姿を見て、再び驚きのあまり顎が外れそうになった。冷酷無比な社長が彼らの前で恋愛話をするだけでなく、顔中に優しさを溢れさせている。この光景はあまりにも甘すぎて、恥ずかしくて直視できないほどだった。