第176章 なんと彼だったとは!

神崎弥香は驚いて顔を上げた。彼女の目は輝き、喜びに満ちた表情で尋ねた。「畑野さん、どうしてここに?」

畑野信彦は落ち着いた様子で腕を組み、唇の端に浅い笑みを浮かべながら、何気なく言った。「君を助けに来たに決まってるだろう。どうして立ち上がらないんだ?俺が手を貸すのを待ってるのか?」

神崎弥香は慌てて首を振り、後ろを振り返った。さっき彼女を追いかけていた二人の男はすでに姿を消していた。彼女はようやく安堵の息をついた。彼女が地面から立ち上がろうとしたとき、白く長い指の手が彼女を引き上げた。

「どうして私が危険だって分かったの?」

畑野信彦の登場はあまりにもタイミングが良すぎた。まるで未来を予知する能力でもあるかのようだった。神崎弥香は服についた埃を払いながら、困惑した様子で彼を見つめた。

「知りたいか?」畑野信彦は興味深そうに彼女を見て、低く笑った。

「うん」神崎弥香は真剣に頷き、彼の答えを待った。

彼はちらりと目を止め、それからだらけた調子で答えた。「俺が誰だか分かってるだろう。指を折って占ったら、君が危険だと分かったから、すぐに駆けつけたんだ」

神崎弥香は呆れたように彼を一瞥した。「本当に自惚れが強いわね。まあいいわ、言いたくなければ言わなくても」

彼女はそう言って家に向かって歩き始めた。畑野信彦は笑みを引っ込め、鋭い目つきで後ろの空っぽの通りを見た後、警戒心を露わにしながら神崎弥香の後に続いて階段を上がった。

神崎弥香がドアを開けると、畑野信彦はすぐに後に続いて入った。彼は入るなり食卓の椅子に座り、お腹が空いたと言い出した。神崎弥香はそこで、さっきスーパーで買った食材を外に置き忘れたことを思い出した。

彼女は畑野信彦を見て、相談するような口調で尋ねた。「ちょっと戻ってみてくれない?さっきスーパーで買ったものがまだあるか見てほしいの。捨てるのはもったいないし、外に出て数十メートル戻れば見つかるはずよ」

畑野信彦は不真面目そうに眉を上げ、そっけなく言った。「君は本当に大胆だな。あの二人が今でもドアの外に潜んでいて、俺が出て行った途端に入ってきて君を捕まえるかもしれないと思わないのか?午前中のことから何も学んでないようだな!」