三神律は再び望月文臣のことを持ち出し、藤上弥香はハッとした。彼女は望月文臣が言った「今度一緒に食事をしよう」という言葉を思い出した。三神律に余計な心配をさせたくなかったので、きっぱりと答えた。「ないわ」
三神律は藤上弥香をじっと見つめ、意味深げに言った。「弥香、私は以前望月文臣と何度か取引したことがある。彼は油断ならない男だ。これからはなるべく彼との付き合いは避けた方がいい」
藤上弥香は三神律の全身から不安が滲み出ているのを感じ取り、思わずうなずいた。
実は彼女は部屋に入る前、望月文臣の提案を三神律に採用するよう説得するつもりだった。結局、材料の購入は小さな出費ではなく、畑野信彦が金銭的に困ることを心配していた。さらに、後で三神律がこのことを知って、彼女が勝手に行動したと責めるのではないかと恐れ、二人の関係に影響が出ることも心配していた。