第278章 望月昇を帝都市へ連れていく!

桑原秀美は子供が彼女を「おばあちゃん」と呼ぶのを聞いて、彼女の心はたちまち柔らかくなった。異国の地で、この二人の若者が子供を育て、しかもこんなに良く面倒を見ていることがどれほど大変だったか、考えるまでもなく分かった。

彼女はすぐに目が赤くなった。二人に見られたくなかったので、素早く背を向け、小声で言った。「三人とも、中に入りなさい」

彼らが桑原秀美の後ろについて入ってきたとき、リビングで背を向けて座っていた望月岩男が冷たい声で口を開いた。「望月文臣、ここはホテルじゃない。来たいときに来て、帰りたいときに帰れる場所じゃない。お前が海外に行くとき、はっきり言っておいただろう。それなのに、なぜ戻ってきた」

桑原秀美は子供にこのような不愉快な言葉を聞かせたくなかった。彼女が丸く収めようとしたとき、望月昇が素早く歩み寄って望月岩男の前に立ち、敬意を込めて礼儀正しく言った。「おじいちゃん、こんにちは」

望月岩男は目の前の少年を見て、すぐに黙った。彼は少年を見回した後、無意識に柔らかい口調になった。「君は?」

望月昇はゆっくりと落ち着いて答えた。「おじいちゃん、こんにちは。私はあなたの孫です。望月昇と言います」

望月岩男は彼の答えを聞いて、硬かった表情がたちまち緩んだ。彼は遠くに立っている望月文臣と神崎弥香を見て、口をとがらせ、ぎこちない様子で言った。「お前たち二人はずっとそこに立っているつもりか?こっちに来て座りなさい」

望月文臣は神崎弥香を見て、目で大丈夫だと合図した。神崎弥香は彼の意図を理解して頷いた。その後、二人は望月岩男の向かいのソファに座り、それぞれ「お父さん」と「おじさん」と呼びかけた。

望月岩男は返事をしなかったが、桑原秀美は望月岩男が彼らを招き入れたのを見て、孫の到着によって彼の怒りがかなり和らいだことを知った。彼女自身もそうだった。

望月文臣が海外に行って以来、彼はめったに電話をかけてこなかった。彼らは彼に腹を立てていたので、連絡を取らないようにしていた。数日前、彼は突然電話をかけてきて、授賞式に参加するために帰国すること、そして彼らがおじいちゃんおばあちゃんになったことを知らせた。