それは槍じゃないよ、華

竇心石が瞬きをして震えるのを止めると、老虎趙はようやく満足げな唸り声と共に彼を解放した。

そして -

ビュン!

一つの影がものすごい速さで彼らの横を通り過ぎ、心石の髪が風にそよいだ。

少女だった。

彼女だ。

華飛雪。

両腕を高く上げ、袖が風になびく旗のように翻りながら、彼女は真っ直ぐに新しい部屋へと駆け込んだ。

「何か面白いものの匂いがするぅぅ〜!」

彼女の声が店内に響き渡った。色彩感あふれ、エネルギッシュで、神秘的な声…明らかに何の匂いも嗅げないはずなのに。

残りの者たちはしばらくその場に立ち尽くしていた。

誰も疑問を口にしなかった。

「…やっぱり彼女か」心石は袖を払いながら呟いた。

「いつもこうだよね」林一軍が横から付け加え、両手を頭の後ろに組んで前に進み出た。

「たぶん、ここに来る前に街中を一周してきたんだろうな」蕭連峰が笑いながら言った。

それでも、好奇心が全員の心を蝕んでいた。

彼らは飛雪の後を追って部屋に入った。

部屋の中央に、まったく動かずに立っていたのは飛雪だった。彼女の輝く瞳は前方に釘付けになり、口は驚きで少し開いていた。

全員の視線が彼女の見ている方向へと向けられた。

そこにあったのは。

緑色のフェルト地のビリヤード台。

一軍は首を傾げた。「…テーブル?」

「凝ったものだな」

「食事用かな?」一軍は角の一つを突いてみた。

「このテーブルは高すぎるよ」飛雪が答えた。

連峰が前に進み出て、鋭い目で縁を調べた。「なぜ椅子がこんなに離れているんだ?」

誰も答えられなかった。

彼らはゆっくりとテーブルを囲み、あらゆる角度から検分した。

一軍は磨かれた木の表面に指を走らせた。

心石はしゃがみ込んで、まるでテーブルが彼に秘密を囁くかのように、耳をテーブルの側面に押し当てた。

老虎趙は表面を拳で軽く叩いた。

それでも、沈黙が続いた。

「何らかの娯楽用具ですね」

全員が一斉に振り向いた。

月雪燕だった。

そして彼女の後ろに静かに立っていたのは…店主だった。

「そうですよね、先輩?」彼女は落ち着いた様子で尋ねた。