夜が、呪いのように崩れ落ちた。
死者の煙がなおも空に漂い、
かつて守護者だった太陽さえ、昇ることを拒んだ。
その失われた光の静寂の中、
風を裂いて響く絶叫があった——
「来るぞ!ブルサーカーが来る!!」
悲鳴が風の足取りを乱し始める。
彼は、ただ立っていた。
屍の山に足を埋め、
胸には深く突き刺さった槍。
それでも、倒れはしなかった。
呼吸は浅く、だが目は揺るがない。
まるで“死”が、
ただの旧友にすぎないかのように。
今は会っている暇などない——とでも言うように。
「水を持ってきて!」
「急いで!赤ん坊が来る!」
メイドの手が震え、
声は恐怖と希望の重みによってかすれた。
「男の子です…」彼女は囁いた。
だが、ベッドに横たわるその母親は、
既にこの世を去っていた。
開いたままの目は、何も見ておらず——
まるで、戻れない夢の中に微笑む人のようだった。
「逃げろ!皆、早く逃げろ!!」
叫び声が空気を切り裂く。だが、彼は動かない。
もう、与える慈悲は残っていなかった。
感じるべき恐怖もない。
ただ、胸から落ちる血だけが、誓いのように滴っていた。
「俺は…そのために生まれたんだ。」
彼は呟いた。
「俺が流す血で、誰かが生きられるなら——」
城門では、斥候の一人が倒れ込み、息を切らしていた。
彼の目が、貴婦人のものと交わる。
「…お嬢様、一人として…生き残っていません。」
彼女は、燃え上がる地平線をただ見つめた。
「…ならば、神よ哀れみたまえ。
この世の最期の光が消えゆく時に、生を受けたあの子を——」
そして、静寂のそのさらに上にて。
戦の獣と化した少年は、
目を閉じた。
死体の海の中、
微かな笑みを浮かべながら立ち尽くす。
——だが、それももう終わりだ。
長くは続かない。