剛毅で冷たい横顔、気品と距離感のあるオーラを纏い、落ち着きと知性を感じさせる。
確かに女性の胸をときめかせるタイプだ。
「顔を向けるな!」男が突然口を開いた。
高橋優奈は恥ずかしくなり、慌てて視線を外したが、すぐに何かがおかしいと思い、再び綾瀬光秀の方を向いた。「私は外の景色を見ていただけよ。あなたに何の関係があるの?!」
「ふん、そうか?!」
高橋優奈は反論した。「まさか、あなたを見ていたとでも?!」
「黙れ、うるさい!」
高橋優奈、「……」
要するに、彼女が何をしても何を言っても間違いということだ!
二、三十分後、グスターは富山老人ホームの前に停車した。
車が停まるとすぐに、高橋優奈はシートベルトを外し始めたが、男の声が突然響いた。「動くな。座っていろ。」
彼女の返事を待たずに車を降りた。
高橋優奈は大人しく車の中で待っていたが、心の中では男の迅速な行動に文句を言っていた。
数分後、窓がノックされ、男は冷たく言った。「降りろ!」
高橋優奈が車を降りると、綾瀬光秀が手に果物や高齢者に良い栄養補助食品を持っているのを見た。
心が不意に温かくなり、彼女は微笑んだ。左頬に深い酒窪ができた。「これを買いに行ってたの?」
綾瀬光秀は彼女の心からの笑顔を見た。それはとても無防備で無邪気で、彼の心は何かに噛まれたように、痛くもあり痒くもあり、言い表せない感覚だった。
しかし彼の表情は相変わらず暗かった。「手ぶらで来るなんて恥ずかしくないのか。綾瀬家の恥になる!」
高橋優奈は口をとがらせた。「はいはい、わかったわ。」
綾瀬光秀は大股で老人ホームに向かって歩き始めたが、数歩進んだところで高橋優奈がついてこないことに気づいた。
彼は眉をひそめて彼女を見た。「案内しないのか?!」
高橋優奈はハッとしたように彼に追いつき、自然に男の腕を抱きかかえた。
綾瀬光秀は急いで腕を引き抜こうとしたが、女性はしっかりと掴んでいた。彼は不機嫌に尋ねた。「何をしている?!」
高橋優奈は初めて懇願するような目で男を見た。「お願い、協力して。おばあちゃんに新婚の夫が私に優しくて、夫婦仲が良いところを見せないと、安心してもらえないの。」
これは結婚後初めて、高橋優奈が綾瀬光秀の前で頭を下げて頼むことだった。
男は平然とし、良いとも悪いとも言わなかったが、その腕はもう彼女から逃れようとはしなかった。
高橋優奈は内心ほっとし、彼に感謝の気持ちが湧いてきた。
高橋優奈が綾瀬光秀をおばあちゃんの部屋へ案内しようとしたとき、彼女が避けたい人物が向こうから歩いてきた。
それは高橋優奈のおばあちゃんの世話を専門に担当している藤田欣子という介護士だった。
高橋優奈が頭の中で「どうしよう、どうしよう」と考えているうちに。
藤田欣子はすでに二人の前に来ており、思わず高橋優奈の隣にいるハンサムな男性に一瞥をくれてから、視線を高橋優奈に移した。「優奈ちゃん、おばあちゃんに会いに来たの?」
「うん。」彼女はうなずいた。
そして藤田欣子は急いで言った。「おばあちゃんの来季の……」
言葉が半分も出ないうちに、高橋優奈は綾瀬光秀から離れ、彼女を引っ張って数歩前に進んだ。「欣子さん、お願い。費用のことは前に電話で言われたし、期日通りに払うつもりよ。」
そう言いながら、高橋優奈は少し離れたところにいる男性を指さし、続けて藤田欣子に言った。「彼は私の友達で、私が老人ホームの費用を滞納していることを知られたくないの。だから彼の前でその話はしないでくれる?」