第091章 心臓が急に掴まれたような

高橋優奈はようやく顔を上げて彼女を見た。「何か用？」

雪村悦子はしばらくもごもごした後、ようやく口を開いた。「別に、ただもう冬に入って、日が暮れるのが早いから、あなたが遅くまで帰らないと危ないかなって。」

高橋優奈の瞳が微かに動いた。怪訝に思いながらも、雪村悦子に笑顔を見せた。「ありがとう、すぐ終わるわ。」

「わかった、じゃあ先に行くね。」

「さようなら。」

高橋優奈はこの二言を残すと、また仕事に戻った。

雪村悦子は営業部にもう少し留まり、高橋優奈がまだ動く気配がないのを見て、バッグを持って出て行った。

彼女は帰らず、エレベーターで上の階へ向かった。

最上階、社長室の外で、雪村悦子は明かりがまだついているのを見て、足を踏み出して近づいた。

彼女がドアをノックすると、男性はようやくノートパソコンから顔を上げた。雪村悦子を見た瞬間、眉をしかめたようだった。「まだ帰ってないのか？」