綾瀬光秀がバックミラーから視線を戻した時、彼の表情はさらに冷たくなった。
……
横浜中央病院。
綾瀬光秀は片手でVIP病室のドアを押し開け、もう一方の手をスラックスのポケットに入れたまま、足を踏み入れた。
ベッドには相変わらず一人の女性が横たわっており、彼女は目覚める気配を全く見せていなかった。
綾瀬光秀の瞳は暗く沈み、雪村郁美の美しくも儚げな顔を見つめていた——
彼女の茶色の髪は整えられたばかりのようで、今は真っ白な枕の上に広がり、彼女自身と同じように美しかった。
病室のドアから「キィ」という音が聞こえたが、光秀は振り向かなかった。しかし、誰かが彼の方へ歩いてくる足音が聞こえた。
「光秀お兄さん、お姉ちゃんに会いに来たの?」雪村悦子の声は静かで、言い表せない試みと慎重さを含んでいた。