第160章 ありがとう

綾瀬グループ営業部。

出勤して5分後、オフィスのドアから丁寧なノックの音が聞こえてきた。

高橋優奈は皆と一緒にそちらを見た。

人事マネージャーの隣に一人の女性が立っていた。

彼女は今季流行のダークオレンジ色のロングウールコートを着て、中には白い丸首のセーターを着ていた。

足元にはハイヒールのロングブーツ。

見知らぬ顔だったので、これが高給で引き抜かれた営業部のもう一人の主任だと容易に推測できた。

高橋優奈の視線が人事マネージャーからその人に移ったとき、少し驚いた。

これは先ほどポルシェを運転して、ついでに彼女に説教した女性ではないか!

彼女は唇を引き締め、表情に波風は立てなかった。

このとき人事マネージャーの声が響いた:「こちらは藤原羽美さん、新しい営業主任です。業界での彼女の評判については多くを語る必要はないでしょう、皆さんもご存知のはずです。」