第177章 彼はずっとこうなのよ

高橋優奈の視線は彼の顔に釘付けになっていた。

男が話すとき、その眉間には万人を見下すような威厳があった。

高橋優奈は知っていた、綾瀬光秀は当然何も恐れていないし、彼を笑う勇気のある人などいないことを。

さっきは彼が自分の朝食を捨てたことに腹を立て、一時的な怒りで、言い争おうとしただけだった。

でも今は……彼の大胆不敵さに深く感服していた。

元々男を睨んでいた目が動き、視線を戻し、一言も言わずに毅然と会議室を後にした。

会議室で、綾瀬光秀は彼女の背中が徐々に消えていくのを見つめ、深い瞳が不機嫌に暗くなった。

彼はこれまで誰にもこんなに無視されたことがなかった！

男はすぐに会議室を出て、専用エレベーターで社長室のフロアへと向かった。

秘書室を通りかかったとき、綾瀬光秀は足を止め、女性秘書の一人に指示した。「渡辺康一が帰ったら、高橋優奈と藤原羽美をオフィスに来るよう伝えてくれ。」

秘書は礼儀正しい笑顔で答えた。「かしこまりました、綾瀬社長。」

……

渡辺康一が綾瀬グループの見学を半分ほど終えたところで、電話で呼び出された。

10時半、綾瀬光秀の秘書が報告した。「社長、営業部の二人の主任が上がってきて、外でお待ちです。」

デスクに座っていた男はキーボードを打つ動作を止め、低い声で言った。「入れてくれ。」

「はい。」

秘書が応じた後、高橋優奈と藤原羽美が社長室に入った。

綾瀬光秀はすでに机からソファの方へ移動していた。彼は手を伸ばして二人に示した。「座りなさい。」

高橋優奈と藤原羽美は着席した。

綾瀬光秀も座った。

彼はソファに寄りかかり、足を組み、片手を無造作に置き、視線を高橋優奈の顔に向けた。「藤原主任の話では、渡辺康一の件は純粋に手伝っただけだと言っていたな。」

「はい、社長。」高橋優奈は話すとき、完全に仕事の話をする態度と口調だった。

男は頷き、また藤原羽美を見た。「そういうことなら、藤原主任も綾瀬グループで契約を取ったことになる。私が言ったように、君が契約を取ったら、祝賀会を開くと。」

これを聞いて、藤原羽美は少し驚いた様子で、すぐに笑顔を浮かべた。「社長、あの時は冗談でしたから、本気にしなくても大丈夫です。」