第190章 率直に言わせてもらえば

藤原羽美は右手を目の前のガラステーブルに置き、何気なくワイングラスを弄んでいた。

彼女の目は虚ろで、口元には苦笑いが浮かんでいた。

いつも有能な藤原羽美がこんな様子を見て、高橋優奈は完全に口を閉ざした。

彼女は知っていた、どれだけ言葉を尽くしても、彼女の心の奥底にある痛みは消せないことを。

おそらく藤原羽美が悲しんでいるのは、彼女の意図的な隠し事だけでなく、綾瀬光秀を何年も好きだったのに、今日になって夢が砕けたことへの...あの悔しさだったのだろう。

……

一方、綾瀬光秀と渡辺康一はすでに壇上から降りていた。

二人とも背が高く、人混みの中でも際立って見えた。

渡辺康一は綾瀬光秀より一つ年上だった。

しかし二人が並ぶと、綾瀬光秀の落ち着いたオーラは彼に少しも劣らなかった。

むしろ、綾瀬光秀は渡辺康一よりも冷静さを備えていた。

渡辺康一は綾瀬光秀を見つめながら、その瞳に読み取れない感情を宿し、低い声で言った。「綾瀬社長、何を話したいのですか?」

「渡辺さん、綾瀬グループと渡辺家の協力、お疲れ様です」

「私は疲れていませんよ、大変なのは綾瀬奥さんの方です」

この言葉を聞いて、綾瀬光秀の表情がわずかに動いた。渡辺康一の高橋優奈への呼び方が「優奈」から「綾瀬奥さん」に変わったことは、彼の態度の変化を表していた。

男の唇が微かに動き、落ち着いた、しかし礼儀正しさだけではない笑みを浮かべた。

彼は笑うだけで何も言わず、渡辺康一は眉を少し上げた。「綾瀬社長が私と話したいというのは、こういうことですか?」

綾瀬光秀は通りがかったウェイターのトレイから赤ワインを二杯取り、そのうちの一つを渡辺康一に差し出した。

後者はちらりと見て、それから平然と受け取った。

綾瀬光秀は薄い唇を開いた。「渡辺さん、あなたが以前私と妻の関係を知らなかったことを考慮して、先ほどのあなたの発言については問題にしません。しかし、今後は渡辺さんが私の妻に干渉しないことを望みます。綾瀬グループと渡辺家の今後の協力については、藤原羽美主任が全権を持って担当します」

言い終えると、男はワイングラスを持ち上げ、乾杯のポーズをとった。