第190章 率直に言わせてもらえば

藤原羽美は右手を目の前のガラステーブルに置き、何気なくワイングラスを弄んでいた。

彼女の目は虚ろで、口元には苦笑いが浮かんでいた。

いつも有能な藤原羽美がこんな様子を見て、高橋優奈は完全に口を閉ざした。

彼女は知っていた、どれだけ言葉を尽くしても、彼女の心の奥底にある痛みは消せないことを。

おそらく藤原羽美が悲しんでいるのは、彼女の意図的な隠し事だけでなく、綾瀬光秀を何年も好きだったのに、今日になって夢が砕けたことへの...あの悔しさだったのだろう。

……

一方、綾瀬光秀と渡辺康一はすでに壇上から降りていた。

二人とも背が高く、人混みの中でも際立って見えた。

渡辺康一は綾瀬光秀より一つ年上だった。

しかし二人が並ぶと、綾瀬光秀の落ち着いたオーラは彼に少しも劣らなかった。