第206章 心に不満を抱く

高橋優奈の言葉が終わるや否や、綾瀬光秀は笑った。

彼はソファに寄りかかり、足を組んで、彼女を一瞥した。「座れ」

「結構です。小切手を切るか、今すぐ出て行きます」

それを聞いて、綾瀬光秀は怒ることもなく、うなずいた。「デスクに行って、右側の一番上の引き出しから小切手を持ってきなさい」

高橋優奈は目を凝らし、男を二秒ほど見つめた後、実際にそちらへ歩いていった。

彼女が持ってきたのは、小切手一枚とペン一本だった。

女性はその二つをソファの前のテーブルに置き、そして脇に立って綾瀬光秀を見つめた。

彼はペンを取り、指の間で弄びながら、淡々と言った。「さっき渡辺康一が待っていると言っていた秘書を呼んできなさい」

高橋優奈は「……」

自分自身と意地を張っているのか、それともこの男と意地を張っているのか分からなかったが、彼女は今、心の中で不満を抱えていた。

そして今、この男はさらに彼女に次々と命令するのか？！

「あなたの秘書なら、自分で呼んでください」

それを聞いた男は彼女を見上げることもなく、ただ万年筆を握る手が少し止まり、薄い唇が上がった。「そのドレスはいくらだった？」

「二千五百万円です」

「そんなに高いお金で、秘書を一人呼びに行くのが嫌なのか？」

高橋優奈は黙り、行くべきかどうか内心で迷っていた。

男はすぐにまた口を開いた。「行かないなら、渡辺康一をずっと待たせておくだけだ」

彼がそう言うと、彼女はすぐに尋ねた。「どういう意味ですか？」

「秘書を呼んでこい」

高橋優奈は言葉もなく、男に向ける視線には極度の不満が込められていたが、結局は身を翻して秘書を呼びに行った。

その時、綾瀬光秀は小切手に数字を書き、それを手に取り、ソファに寄りかかって一人満足げに眺めていた。

秘書はすぐに入ってきて、綾瀬光秀の側に立ち、敬意を込めて「綾瀬社長」と呼んだ。

男は手を伸ばして小切手を彼女に渡した。「これを渡辺康一さんに渡して、高橋主任は彼に会いに行かないと伝えなさい」

秘書は受け取った。「かしこまりました、綾瀬社長」