第256章 夜幕が落ちる

綾瀬光秀は低くかすれた声で言った。「初めて?」

その言葉に、女性の頭は一瞬ショートした。

窓の外では、夜の帳が降りたばかりだった。

……

翌日。

高橋優奈は浴室からの水音で目を覚ました。

彼女はぼんやりと目を開け、いつもと違う天井を見つめ、自分が今主寝室にいることを徐々に思い出した。

昨夜の親密なシーンが次々と脳裏によみがえり、思わず頬を赤らめた。

我に返り、女性は浴室の方向を見た——

水音はまだ続いていた。彼女は突然、あの男性にどう接すればいいのか分からなくなり、緊張で心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

高橋優奈がベッドから起き上がると、綾瀬光秀の声が響いた。「何をしているんだ?」

彼女の動きが止まり、思わず彼の方を見上げた……

今は昨夜のようにバスタオル一枚ではなく、寝間着を着ていて、小麦色の胸元が露出していた。

綾瀬光秀は既に歩み寄り、かがんで床から寝間着を拾い上げ、しばらくそれを見つめてから彼女に手渡した……

高橋優奈はためらったが、数秒後には手を伸ばして受け取った。

しかし……綾瀬光秀は手を離さなかった。

彼女は訳が分からず彼を見つめた。「綾瀬さん、どうして手を離さないんですか?」

綾瀬光秀の視線は彼女を越えて、灰色のシーツに落ちた。

男性は最後に視線を彼女の顔に戻した——

彼はしばらく彼女を見つめ、胸の内に言い表せない……奇妙な感覚を覚えた。

高橋優奈は彼が何を見ているのか分からなかったが、少し恥ずかしくなった……

だから彼女は彼の視線を避け、彼が握っている寝間着を見つめ、もう一度呼びかけた。「綾瀬さん?!」

男性は我に返り、再び視線を彼女の顔に落とし、彼女の寝間着を握っていた手をようやく離した。

高橋優奈が受け取ると、綾瀬光秀は身を翻した。

彼女は彼が出て行くと思ったが、そうではなく、寝室のソファに座った。

高橋優奈、「……」

彼女はそれ以上何も要求しなかった。結局、ここは主寝室で、彼のテリトリーだった。

女性は寝間着を持って布団の中に潜り込んだ。

綾瀬光秀は彼女の動きを見つめ、薄い唇を軽く噛んだ。

寝間着を着終えると、高橋優奈は痛みをこらえてベッドから降りた。彼女は部屋の入り口まで視線を走らせ、自分のスリッパがドア付近に置かれているのを見つけた。