第263章 あなたは嬉しいの?

午後、仕事が終わった後、営業部の同僚たちがまだ全員帰っていないうちに、綾瀬光秀が降りてきた。

彼が入ってくると、もともと帰るつもりだった同僚たちも、大きな動きをする勇気がなくなった。

従業員として、上司の前で時々自分の仕事への熱意を示すのは、非難されるべきことではない。

高橋優奈は皆に残業させないように、素早く荷物をまとめ、男性をちらりと見て、淡々と言った。「行きましょう」

彼女はそう言うと、すぐに足を踏み出して去り、部署の入り口でタイムカードを押して、営業部を出た。

全過程での男性とのやり取りは、その二言「行きましょう」だけに限られていた。

二人が営業部を出た後、部署内では議論が始まった——

「綾瀬社長は優奈の前では性格がとても良さそうね?!」

「そうそう、きっと女性にはすごく優しいんだよ!」

「どうやら我らが綾瀬社長は、典型的に他の人には冷たく、自分の女性にだけ熱い人なんだね!」

「でも、病院に寝ている植物人間はどうするの?」

皆は一瞬黙った。

……

高橋優奈は本当に以前より静かになっていた。

彼女は運転席に座り、一言も話さず、綾瀬光秀は車を運転しながらも、自ら話題を探そうとはしなかった。

道中の30分はほぼそのように過ぎていった。

車が湾岸レジデンスの外に停まると、高橋優奈はドアを開けて降りた。

彼女は綾瀬光秀を待たずに別荘に入り、キッチンで手を洗った後、夕食の準備を始めた。

このとき、綾瀬光秀はようやく車を施錠してリビングに入ったところだった。

男性はダイニングルームの人影をちらりと見たが、直接そちらに行かず、リビングに座って携帯を取り出し、電話をかけた。

相手が電話に出ると、綾瀬光秀は淡々と尋ねた。「雪村悦子は何か怪しい人物と接触していないか?」

「綾瀬社長、ありません。雪村さんは日常的に買い物に出かける以外は、接触する人はとても少なく、電話をかけるとしても、それはカスタマーサービスや広告などですが、ただ……」

「どうした?」

「雪村さんは今日、横浜中央病院に行きました。その時私が止めて、中に入れませんでした」

「うん、私の許可なしに、彼女はその病院に出入りしてはならない。もし彼女が不幸にも病気になったら、他の病院に行かせろ」

「はい、綾瀬社長」