第322章 綾瀬さんが付いてくるとは思わなかった

実際、根岸家は横浜宝石街の顔役として、婚約パーティーが盛大になるのは当然のことだった。

しかし根岸詩音の立場から考えると……話は別だった。

高橋優奈の認識では、氷室直人との婚約は詩音にとって良い選択ではなかった。

だから、彼女は親友が氷室直人と婚約することをずっと拒絶していた。

高橋優奈はしばらく考えてから、詩音を見つめて唇を噛みながら尋ねた。「でも……これじゃあなたにとって不利じゃない?」

詩音は口元を引き締めた。「そんなことないわ。私は心変わりするつもりなんてないから」

高橋優奈は詩音の考えを大体理解し、話題を変えて直接聞いた。「あなたにとって、今は根岸家の安全が一番大事なの?」

彼女の言葉が落ちると、詩音は冗談めかして笑い、何気なく頷いた。「そうよ、私の親友として、あなたは本当に私のことをよく分かってるわね」