高橋優奈は顔から笑みを消し、不満げに男を睨みつけた。
葉山淑美の穏やかな笑い声がすぐに響いた。彼女は綾瀬瑞樹を見て、確かに質問を変えた。「瑞樹、好きな女の子はいるの?」
綾瀬瑞樹は気軽な口調で、さらに微かな笑みを浮かべながら答えた。「いないよ。ほら、父さんが誰か紹介してくれるのを待ってるんだ」
それを聞いて、綾瀬陽向の眉が思わず寄った。
しかし、母親である葉山淑美がここにいるため、綾瀬陽向は明らかに口を挟むつもりはなかった。
葉山淑美は不賛成の目で綾瀬瑞樹を見つめ、再び口を開いた時の口調には責めるような調子があった。「あなたったら、何を言ってるの?」
「おばあちゃん、本当のことを言ってるだけだよ」
葉山淑美も彼をどうしたらいいのか分からず、ため息をついた。「瑞樹、あなたはもう若くないのよ。あなたの年齢なら、おばあちゃんの時代では、もう二、三人の子供がいたわ。結婚していないのはまだしも、彼女一人連れてこないなんて、どうして安心できるかしら?」
「おばあちゃん、自分でも言ったじゃない、それはおばあちゃんの時代の話で、今は明らかに違うよ。そうじゃなきゃ、兄さんだって三十過ぎてるのに子供もいないでしょ。おばあちゃんたちの時代なら、兄さんの年齢で子供はもう十歳くらいだったんじゃない?」
綾瀬瑞樹はそう言いながら、唇から低い笑いがこぼれた。
彼の言葉が終わると同時に、霧島瑞姫の表情も曇った。
綾瀬謙二が彼に一瞥を送った。
軍人として、彼はもともと威厳のある雰囲気を持っていたが、この一瞥には感情が加わり、より人の心を震わせるものとなった。
綾瀬瑞樹は軽く咳をし、それから手を上げて自分の後頭部をさすりながら、再び葉山淑美を見て口を開いた。その口調には少し無邪気さがあった。「それに、本気で言ってるんだ、父さんに紹介してもらうって。誰も信じてくれないなら、僕にどうしろっていうの。あるいは…」
綾瀬瑞樹は言葉を切り、霧島瑞姫と高橋優奈をそれぞれ見てから、再び口を開いた。「兄嫁や二番目の兄嫁に紹介してもらってもいいよ。綾瀬家に嫁ぐのにふさわしい、あなたたちが気に入るような女性なら、僕は何も文句ないよ」
霧島瑞姫は綾瀬瑞樹を一瞥したが、何も言わなかった。
高橋優奈は先ほど笑っただけで綾瀬光秀に反論されたので、今度はもう余計なことは言わないようにした。