高橋優奈、「……」
彼女は唇を引き締め、彼を見つめた。「どうしてまた来たの?」
男は首を振り、笑みを引っ込めて彼女に言った。「君と兄さんの結婚披露宴の夜、実はホテルに行ったんだ。でも後で電話して行かなかったと言った。ごめん、嘘をついた」
高橋優奈は彼を責めず、ただ尋ねた。「どうして1213号室にまで行ったの?」
「誰かから電話があって、君が1213号室で意識不明だと言われた。心配で行ってみたら、君はベッドに横たわって目を閉じていた。眠っているように見えたけど、呼んでも起きなかった」
ここまで言って、霧島律は手を上げて自分の後頭部をさすりながら、うつむいて言った。「あの日、君はとても綺麗だった。ベッドの傍に立って少し見ていたら、色心が起きて、身を屈めてキスをした。でも…ほんの一瞬だけだ」