第398章 あなたはようやく子供があなたのものだと信じた

相手の言葉が終わるや否や、綾瀬光秀は瞬時にソファから立ち上がり、テーブルの上に置いてあった車のキーを手に取りオフィスのドアへと向かった。

霧島律も立ち上がって後を追った。「兄さん、どうしたんですか?」

……

綾瀬光秀と霧島律は一緒に病院へ向かった。

二人は手術室の外で待っていた。

どれくらい時間が経ったか分からないが、手術中の赤いランプが消え、中から医師が出てきた。

綾瀬光秀は表情が険しく、医師の前に歩み寄って尋ねた。「どうなっていますか?」

「患者さんは流産しました。今、掻爬手術を行ったところです。」

「車にぶつかったから流産したのですか?」

「それも一因ですが、主な原因は患者さんが流産を引き起こす薬物を服用したことです。」

医師の言葉が落ちた後、綾瀬光秀は長い沈黙に包まれた。

薬を飲んだ?!

高橋優奈が選びそうな中絶方法には思えない。

男が黙っている間、霧島律は驚いた表情で彼を見た。「優奈が...妊娠していたの?」

男は冷ややかに彼を一瞥した。「聞こえなかったのか?医者が既に流産したと言っただろう。」

「兄さん、それはあなたの子供ですよ。子供を失ったのに少しも悲しくないんですか?」

今になっても霧島律がそう言うのを聞いて、綾瀬光秀の表情にようやく動揺の色が見えた。彼は濃い瞳を霧島律の顔に向け、抑制された声で尋ねた。「あの日、本当に彼女に触れなかったのか?」

「何度言えば信じてくれるんだ?」

綾瀬光秀の体側の手がだんだんと握りしめられ、薄い唇が一本の線になった。

霧島律は彼の様子を見て取り、男を見つめながら試すように尋ねた。「彼女はなぜ中絶薬を飲んだんだ?」

綾瀬光秀は沈黙したままだった。

霧島律はさらに推測した。「あなたが飲ませたのか?!」

依然として返答はなかった。

医師は二人を見て、直接言った。「患者さんはもうすぐ目を覚ますでしょう。病室に行って様子を見てください。」

……

10分後、病室内。

高橋優奈は目を開け、無意識に自分のお腹に手を当て、それから目を上げて綾瀬光秀を見た。「私たちの子供は?」

彼女は綾瀬光秀を見ながら、「私たちの子供」と言った。

男は手を上げて額を押さえ、目を閉じてから彼女を見つめ、喉仏が二度上下してから、やっと苦しそうに口を開いて説明した。「優奈、子供はもういないんだ。」