第407章 こんな男に何の用があるというのか

高橋優奈が書斎から出てきた時、無意識のうちに目を上げて階下の男性を見た。

距離はやや遠かったが、それでも綾瀬光秀の傷跡がすでに処置されているのが分かった。

彼女は平然と階下へ降りた。

女性はソファの所まで歩いて行き、綾瀬光秀に冷淡に言った。「お父さんが書斎に来るように言ってるわ」

呼びかけもなく、表情もなく、話す時も淡々とした陳述だった。

ソファに座っていた男性は顔を上げて、目の前に立っている高橋優奈を見つめた。その瞳は深遠で、彼は彼女の無表情な顔から何かを捉えようとしているようだったが、3秒ほどで女性は視線を外し、ソファに座った。

綾瀬光秀はまだ動かなかった。

そこで彼女も面倒くさがらずに繰り返した。「お父さんが書斎に来るように言ってるわ」

彼の視線が空中から移動し、顔を横に向けて彼女を2秒ほど見つめ、最後に頷いて軽く「うん」と声を出した。