第419章 このことは奥様に知らせないで

綾瀬光秀は朝食を終えると、書斎へ向かった。

男が丁度ノートパソコンを開いたとき、傍らに置いてあった携帯電話が鳴り始めた。彼は着信表示をちらりと見ると、眉をたちまち少し顰めた。

彼は電話に出ることもなく、切ることもなく、視線はすぐにまたノートパソコンに戻った。

綾瀬グループの新しい財務報告書はまだ成長傾向を示していたが、成長速度がどんどん遅くなっているようだった。綾瀬光秀は眉をわずかに顰め、突然自分が恋愛では不運だけでなく、仕事でも思うようにいかないと感じた。

携帯電話の着信音がすぐに二度目の鳴り始めた。

彼はついに電話に出て、いらだった口調で言った。「雪村郁美、昨日電話をくれた時、今後は連絡を控えるように言ったはずだ。」

相手は一瞬黙った後、優しい声で言った。「光秀、あなたに話があるの。」