高橋優奈は彼女を見つめながら、頭の中が急に活発になった。
根岸詩音はそういう人だった。彼女には忠実で裏切らない男性が必要で、隠し事や嘘がないことを求めていた。もし本当にそういうことがあっても、彼女は恨み節を言って根掘り葉掘り問い詰めたりはしない。
しかし……心の中には留めておく。
つまり、いつか些細なことが積み重なって爆発寸前のものになり、一度導火線に火がつけば、すべてが一瞬で爆発し、取り返しのつかない結果を招くということだ。
彼女は根岸詩音を見て慰めるように言った。「詩音、そんな風に考えないで。河合さんは三年もあなたを追いかけたんだから、きっとあなたのことが好きなはずよ。それに、本当に話し合わないと解決できないこともあるわ」
根岸詩音は物憂げな調子で言った。「彼が三年かけて私を追いかけたように、他の人を三年追いかけることだってできるわ。感情にひとたび亀裂が入れば、かつての素晴らしい思い出も薄れていき、やがて消えてしまう。そして二人は徐々に愛し合わなくなるの」
高橋優奈は「……」と黙った。
彼女は真剣に考えてみると、確かに一理あると思った。
まるで……彼女と綾瀬光秀のように。
今は詩音にそうアドバイスしているけれど、自分自身は言うべきことを綾瀬光秀に全て言っただろうか?
人はいつも……当事者は見えないものだ。
……
翌日。
高橋優奈がレストランで食事をしているとき、ブロディから電話がかかってきた。
「ブロディ、家ではどう?元気?」
「まあね」
男性はだるそうにその三言を言い、これ以上話したくないような様子だった。そしてすぐに本題に入った。「レイチェル、重要な件で電話したんだ」
「うん、言って」
ブロディの声がすぐに響いた。「君の元夫の会社から、桜井という人が私たちを綾瀬グループに招待したいと言ってきた。彼が言うには……レイチェル、君は以前綾瀬グループの社員だったけど、三年経って会社も多くの変化があったから、見に来てほしいとのことだ。行くか?」
テレサから仕事を持って帰ってきたと聞いたとき、高橋優奈は心の中で公私をはっきり分けると自分に言い聞かせていた。
だから今回も彼女は直接同意した。「綾瀬グループは確かに検討する価値のある会社よ。行きましょう」
「わかった、明日の午前10時はどうだ?」
「私は大丈夫よ」