松本時雄の言葉が落ちると、高橋優奈はただ微笑んで、何も言わなかった。
男性は会計を済ませた後、ゆっくりと席から立ち上がり、高橋優奈を見て言った。「高橋さん、お送りしましょうか?」
「結構です。運転手を連れてきていますから」
彼は真面目な様子で頷き、それ以上は何も言わなかった。
松本時雄が立ち上がった後、紳士的に高橋優奈も立ち上がるのを待ち、二人は前後してレストランの入口へと向かった。
レストランを出るとすぐに、高橋優奈は以前一度だけ会ったことのある女の子——河合奈緒の姿を見かけた。
女の子は視線を直接松本時雄の顔に向けていた。
男性は彼女を見て、眉を少し動かした。
しかし女の子は松本時雄をちらりと見ただけで、彼に向かって笑った。相変わらず無邪気で幼さの残る笑顔だった。