林知恵が目を覚ました時、確かに目の前はまだ真っ暗だった。
しかし徐々に彼女の目の前に白い点が現れ、そして曖昧な人影が見えてきた。
そのとき、深田紅がやってきた。
今では彼女はほぼ人の姿がはっきりと見えるようになっていた。
さっきは純粋に深田紅をからかっただけだった。牛乳に薬を入れたのは彼女なのだから。
林知恵は人差し指を下ろし、ゴマ団子を一口かじった。「みんな忙しいでしょうから行って。私は大丈夫だから」
「でも深田紅が...」来美は不安そうに、無言で部屋のドアを指さした。
「ここは病院だから、彼女は何もできないわ」
「わかったわ」
三人は片付けをして、病室を出て行った。
彼女たちが去ると、深田紅はすぐに戻ってきた。表情は元通りで、むしろ不気味な笑みさえ浮かべていた。
林知恵はまだ見えないふりをしていた。
「知恵、外の天気がとても良いわ。私が支えてあげるから、散歩に行かない?気分もリラックスできるし、もしかしたらすぐに良くなるかもしれないわ」
深田紅はベッドの側に来て、林知恵の布団をいきなりめくり、彼女が見えないことも構わず、ベッドから引っ張り出した。
林知恵も抵抗せず、彼女に引っ張られるままに病室を出た。
「深田紅、ゆっくりして。私は見えないから」
「心配しないで、ちゃんと案内するから」
深田紅は林知恵が見えないと確信していたので、顔の表情を偽装する必要もなかった。
不気味な冷笑。
林知恵は一目見ただけで深田紅がまた何か悪さをしようとしていることがわかった。
あっという間に、深田紅は彼女を病院の庭に連れて行った。
最後に、二人は小さな湖のほとりに来た。
深田紅は足を止め、突然林知恵の手を離した。
「知恵、上着を持ってくるのを忘れたわ。ここで待っていて、取りに行くから」
「深田紅、私は見えないから、私は...」林知恵は注意した。
「大丈夫、すぐ戻るから」
深田紅は意味深に語尾を引き伸ばし、そのまま後ろに歩いていった。
林知恵は困ったような様子で、湖のほとりに立っていた。
朝の庭園は人影もまばらで、吹く風には寒さが混じっていた。
林知恵は腕を抱え、わずかに震え、湖のほとりで特に弱々しく哀れに見えた。
このとき、背後から人影がそっと近づいてきた。