第79章 放火

林知恵は深田紅の無邪気な笑顔を見て、深田紅と折木和秋が座っていられなくなったことを悟った。

この二人が彼女を天田社長の前で活躍させるはずがない。

陰謀に備えるよりも、彼女たちに先手を打たせて、その場で対応した方がいい。

トイレに向かう途中、深田紅は時々林知恵を盗み見ていた。

口を開くと、探るような口調で言った。「知恵、さっき私が話したとき、なぜ止めなかったの?」

林知恵は深田紅が問い詰めてくることを予想していたので、理由もすでに用意していた。

彼女は困ったような表情で深田紅の手を取った。「深田紅、あなたはただプレゼントを届けに来ただけだと思ってたわ。まさかあなたが目立とうとするなんて思わなかったし、あなたも私に何も言わなかったじゃない。どうやって止めればよかったの?」

「私は目立とうとしたわけじゃないわ。あの指輪が本当に素敵だと思っただけよ」深田紅は急いで説明した。林知恵に疑われるのを恐れていた。

「もちろんあなたを信じているわ。ただ、天田社長があなたのことを生意気だと思わないかしら」

林知恵はわざとため息をつき、歩き続けた。

すぐに、背中に深田紅の恨みがましい視線を感じた。

彼女を嫌いながらも排除できず、しかも彼女に頼らなければならない気分は良くないだろう?

でもこれは深田紅が出世するために選んだ道ではないか。

ただ、彼女の踏み台が言うことを聞かなくなっただけだ。

二人は小さな花園を通り過ぎた。そこには多くの椿が植えられており、外のものよりもさらに鮮やかに咲いていた。

深田紅は足を止め、林知恵を引き留めて庭を指さした。「天田社長は本当に椿がお好きなのね。これだけの花を手入れするのは大変だわ。何か問題が起きたら、きっと激怒するでしょうね」

「確かに」

林知恵は花園を見て、うなずいた。

深田紅は林知恵をちらりと見て、目に計算高い光を宿した。

「行きましょう。気をつけて、花を傷つけないようにね。結局、天田社長は私たちのスタジオとの協力を決めたんだから」

「うん」

二人一緒にトイレの個室に入った。

その後、こそこそと怪しげな影が中から抜け出した。

……

一方その頃。

宮本深は湖のほとりに立ち、きらめく波の光が彼の顔に映り、その美しく深遠な容貌を照らしていた。