「うぅぅ……怖いよ、私、暗いのが一番苦手で、何も見えなくて……あっ!」
彼女は何かに躓いたようで、足取りが明らかに乱れた。
林知恵は声を聞いて、深田紅が彼女の方向に向かって倒れてきたのだと察した。
そして彼女の前には宮本深がいる。
深田紅は本当に機会を利用するのが上手い。
続いて体がぶつかる音が聞こえ、深田紅の思惑通りになったようだ。
林知恵が冷笑しようとした瞬間、突然黒い影が彼女の前に立ちはだかった。
彼女は一瞬固まり、反応する間もなく、見覚えのある気配が迫ってきた。
林知恵は無防備なまま唇を奪われ、逃げることさえ忘れていた。
男の体からは、冬の日差しの中の冷たい空気のような香りがした。薄い陽光に少し温められた後の、凛とした暖かさを纏っていた。
彼のキスは強くなく、以前の強引さの半分もなく、むしろ彼女の口を塞ぐためのようで、息は乱れていたが抑制が効いていた。