第82章 自分でやれ

「うぅぅ……怖いよ、私、暗いのが一番苦手で、何も見えなくて……あっ!」

彼女は何かに躓いたようで、足取りが明らかに乱れた。

林知恵は声を聞いて、深田紅が彼女の方向に向かって倒れてきたのだと察した。

そして彼女の前には宮本深がいる。

深田紅は本当に機会を利用するのが上手い。

続いて体がぶつかる音が聞こえ、深田紅の思惑通りになったようだ。

林知恵が冷笑しようとした瞬間、突然黒い影が彼女の前に立ちはだかった。

彼女は一瞬固まり、反応する間もなく、見覚えのある気配が迫ってきた。

林知恵は無防備なまま唇を奪われ、逃げることさえ忘れていた。

男の体からは、冬の日差しの中の冷たい空気のような香りがした。薄い陽光に少し温められた後の、凛とした暖かさを纏っていた。

彼のキスは強くなく、以前の強引さの半分もなく、むしろ彼女の口を塞ぐためのようで、息は乱れていたが抑制が効いていた。

林知恵は床で転がり合う悲鳴に我に返った。

そして、廊下の反対側から使用人の足音が聞こえ、彼女たちが手に持つ点火された香りのキャンドルが見えた。

林知恵はその光が近づいてくるのを見て、慌てて目の前の男を押しのけようとしたが、彼に腰を支えられて部屋に入れられた。

カチリという音と共に、ドアが閉まり鍵がかけられた。

林知恵は男に壁に押し付けられ、彼の息遣いが湿り気を帯びていた。

彼女が手を上げて抵抗しようとした時、男は彼女から離れ、軽く彼女の手を押さえた。

「俺が滋養スープを飲むべきかどうか、知らないのか?」宮本深の低くかすれた声は魅惑に満ちていた。

「あなた……」

林知恵が口を開こうとした時、ドアをノックする音が響いた。

「林さん、キャンドルをお持ちしました。」

宮本深は彼女を見つめ、一歩後ろに下がってドアの後ろに立ち、両手をポケットに入れ、誰かに見つかることなど気にしていなかった。

林知恵は歯を食いしばりながらドアを少し開け、女中の手から香りのキャンドルが載ったトレイを受け取った。

横目で廊下で転んだ二人、折木和秋と深田紅を見た。

「深田紅、起きなさいよ!」

「折木さん?どうしてあなたが?」深田紅は思わず言った。

「どういう意味?私じゃなくて誰だっていうの?」折木和秋の声はかなり鋭くなっていた。