林知恵は宮本深の行動に驚いた。
彼女が抵抗すればするほど、男の興奮は増すばかりだった。
ついに、チャイナドレスが彼女の肩から滑り落ち、彼女は慌てて自分を抱きしめようとしたが、男に片手で両手首を掴まれ頭上に持ち上げられた。
彼はもう一方の手で彼女の顎を軽く掴み、強すぎず弱すぎない力加減でキスをした。
まるで靴の上から足を掻くような、もどかしい感覚だった。
林知恵は唇から漏れる小さな吐息を抑えることができなかった。彼女が今でも唇を固く噛んで、彼のさらなる侵入を拒もうとしていても。
男は彼女の抑制された声を聞きながら、自分自身が止められなくなっていった。目の前の艶やかな唇を見つめ、彼は彼女の唇を軽く噛んだ。
彼女が一瞬驚いたその隙に、すべての息を奪われた。
スーツ越しに彼女の白く柔らかい肌を感じながら、すべてが足りない、足りない…
林知恵は息苦しく、力の差は歴然としていた。
宮本深は彼女が眉をひそめるのを見て、少し理性を取り戻した。
「まだ他の男に近づかせるつもりか?」
「……」林知恵は彼を睨みつけたまま黙っていた。
「まだ伝わっていないようだな」宮本深は顔を下げた。
「もうしません。これでいいでしょう!」林知恵は歯を食いしばって言ったが、その反抗的な目には少しの譲歩もなかった。
彼女は屈服するつもりはなかった。
そんな目が男の征服欲を最も刺激することを知らずに。
宮本深の目が鋭くなり、彼女の頭を支えながらキスをした。
ドアの外で足音が止まり、小さな会話が聞こえてきた。
「何の音?」雪村真理の夫だった。
「もう、からかわないで。あなた、後で6号室に行ってね。でも変なことしちゃダメよ?あなたの心には私だけがいるんだから」
「じゃあ、お前は…少しご褒美くれないか?」
「わかったわ」
二人は互いに絡み合いながら「6」号室の向かいに入っていった。
この声は…やはり田中悦子だ!
休憩室で着替えていた時、林知恵は深田紅がなぜ雪村真理の夫を知っているのか不思議に思っていた。
後に山下穂子から得た情報でジュエリー展のことが言及されていた。
それで林知恵は田中悦子がテーブルの一番目立つところに置いていた写真を思い出した。
田中悦子は以前、あれが彼女の運命を変えたジュエリー展だと言っていた。