田中家、祝勝宴。
警備員の護衛のもと、林知恵は金庫を手に持ち、雪村真理に従って田中広志の休憩室に入った。
同行者は林知恵の他に、ベラと深田紅がいた。
深田紅はベラの推薦だったが、詳しく考えるまでもなく、林知恵はこれが折木和秋の意向だと分かっていた。
彼女たちは今日、自分を窮地に追い込もうとしているのだ。
しかし、それでちょうど良かった。
深田紅が来なければ、この芝居は続けられなかっただろう。
林知恵が部屋に入るとすぐに、田中広志の露骨な視線を浴びた。その目には下劣さと脅しが混ざっていた。
彼は葉巻に火をつけ、笑いながら言った。「雪村長、随分と時間通りだな。もう来ないかと思ったよ」
雪村真理は黒い背中の開いたイブニングドレスを着こなし、優雅で凛とした雰囲気を漂わせながら、冷静に答えた。「田中社長は私たちの大切なお客様です。どうして粗末にできましょうか?」