第135章 自ら部屋のカードキーを渡す

田中家、祝勝宴。

警備員の護衛のもと、林知恵は金庫を手に持ち、雪村真理に従って田中広志の休憩室に入った。

同行者は林知恵の他に、ベラと深田紅がいた。

深田紅はベラの推薦だったが、詳しく考えるまでもなく、林知恵はこれが折木和秋の意向だと分かっていた。

彼女たちは今日、自分を窮地に追い込もうとしているのだ。

しかし、それでちょうど良かった。

深田紅が来なければ、この芝居は続けられなかっただろう。

林知恵が部屋に入るとすぐに、田中広志の露骨な視線を浴びた。その目には下劣さと脅しが混ざっていた。

彼は葉巻に火をつけ、笑いながら言った。「雪村長、随分と時間通りだな。もう来ないかと思ったよ」

雪村真理は黒い背中の開いたイブニングドレスを着こなし、優雅で凛とした雰囲気を漂わせながら、冷静に答えた。「田中社長は私たちの大切なお客様です。どうして粗末にできましょうか?」