個室内。
木村社長の林知恵に対する賞賛は誰の目にも明らかで、ほとんど会う人ごとに彼女を紹介していた。
林知恵もすっかり注目を浴びていた。
宴会が半ばを過ぎたとき、林知恵の携帯が突然鳴った。
彼女は取り出して一目見ると、なんと田中慎治からだった。
数秒迷った後、林知恵はトイレに行くと言い訳して個室を離れた。
「田中アシスタント、何か用?」
「林さん、すぐに三男様の部屋に来てください、彼は...」
カタカタカタ...ジジジ...
何かが高いところから転がり落ちる音のようで、続いてノイズが聞こえた。
林知恵は一瞬固まった後、エレベーターに向かって走り出した。
ハイヒールでは速く走れないと気づき、彼女はハイヒールを脱いで裸足でエレベーターに飛び込んだ。
しかし誰かがタバコを消さずにエレベーター内に捨てていた。