第226章 あなたは何の立場で私に命令するの?

トイレから出た林知恵は、すぐには個室に戻らなかった。

彼女は自分が個室の雰囲気に馴染めないと感じていた。

特に宮本当主が意味深な眼差しで彼女を見つめ、まるで彼女に立ち去るよう促しているようだった。

林知恵は廊下の反対側にある休憩エリアへと歩いていった。

ガラスのドアを開けると、冷たい風が顔に吹きつけ、彼女は首をすくめ、自分自身を抱きしめながら手すりに寄りかかって遠くの景色を眺めた。

気持ちが落ち着いてきたとき、林知恵はまだ果たしていない責任を思い出し、個室に戻ろうとした。

振り返った瞬間、彼女は男性の硬い胸板にぶつかった。

目を上げると、男の冷たい視線と出会い、胸の中が冷たい空気で満たされ、歯が小刻みに震えた。

林知恵は一歩後退し、落ち着いたふりをして男を見た。「叔父さん、何かご用ですか?」

宮本深はすぐには答えず、一歩一歩近づいてきて、彼女を手すりに追い詰め、逃げ場をなくした。

彼は長い腕で彼女を胸の前に閉じ込め、黒く沈んだ瞳に冷たい光を宿していた。

口を開くと、声には嘲りが含まれていた。「私が買った服を着て、他の男と宴会に出席する。林知恵、よくやるね。」

「いくらですか?現金で返します」と林知恵は答えた。

宮本深は笑うでもなく、目に冷たい光を宿して言った。「現金?そんな面倒なことはいらない。元本と利子を一緒に頂くよ。」

林知恵は胸が締め付けられ、反射的に手を上げて彼の接近を防ごうとしたが、手首を掴まれて強く引き寄せられた。

「これが元本だ!」宮本深は声を荒げた。

「何を…」

林知恵の言葉は途中で切れ、彼に強く唇を奪われた。

宮本深は彼女のコートの紐をほどき、大きな手が衣服の間から入り込み、彼女の腰を掴んだ。桑田剛が触れた場所を何度も強く揉みしだいた。

まるで彼女を折ってしまいそうな勢いだった。

林知恵は顔をしかめた。本当に痛かった。

彼女が息苦しくなってきたとき、宮本深は少し唇を離した。

「彼から離れろ。」

林知恵は顔を上げて男の深い顔立ちを見つめ、唇はしびれていた。

彼は彼女と桑田剛の関係を気にしているわけではなかった。

彼はただ危険で横暴な男だった。

彼の女は、捨てたとしても他人が触れる権利はない。

それだけのことだ。