トイレから出た林知恵は、すぐには個室に戻らなかった。
彼女は自分が個室の雰囲気に馴染めないと感じていた。
特に宮本当主が意味深な眼差しで彼女を見つめ、まるで彼女に立ち去るよう促しているようだった。
林知恵は廊下の反対側にある休憩エリアへと歩いていった。
ガラスのドアを開けると、冷たい風が顔に吹きつけ、彼女は首をすくめ、自分自身を抱きしめながら手すりに寄りかかって遠くの景色を眺めた。
気持ちが落ち着いてきたとき、林知恵はまだ果たしていない責任を思い出し、個室に戻ろうとした。
振り返った瞬間、彼女は男性の硬い胸板にぶつかった。
目を上げると、男の冷たい視線と出会い、胸の中が冷たい空気で満たされ、歯が小刻みに震えた。
林知恵は一歩後退し、落ち着いたふりをして男を見た。「叔父さん、何かご用ですか?」