第332章 三兄

その時、林知恵の鼻に特別な香水の香りが漂ってきた。

淡いのに、一瞬で人の注意を引くような香り。

林知恵がこのような香水の香りを嗅いだのは初めてだった。普通の店頭の商品というよりも、特別に調合されたものに思えた。

でも……そんな高級な香水をつけている人が、普通のスーパーに買い物に来るなんて?

疑問を抱きながら、林知恵は少し顔を横に向けて見た。

精巧で立体的な美しい顔が冷淡に現れていた。

試食コーナーで、その女性が爪楊枝を持つ仕草は、まるで高価な宝石を扱うかのようだった。

林知恵の視線に気づくと、女性は横を向いて眉を上げた。

「何か用?」彼女は淡々と口を開き、感情のない口調だった。

林知恵はすぐに我に返り、気まずそうに笑った。「いいえ、何でもないです」

女性は爪楊枝のパンを一口食べた。「悪くないわね、これをください」

店員は彼女の身なりを見るなり、急いで三つの大きな袋を取り出し、女性のカートに入れた。

林知恵はちらりと見て、注意した。「一人で食べるの?」

女性は彼女を見た。「問題ある?」

「賞味期限が近いよ」林知恵は黄色いラベルを指さした。

女性は袋の日付を見た。あと二日で期限切れだった。店員は明らかにそれを知っていて、こんなにたくさん渡したのだ。

店員の小細工がばれて、恥ずかしそうに二袋を取り出した。

問題が解決したのを見て、林知恵はカートを押して向きを変え、前で山田さんを待つつもりだった。

しかし、女性が彼女を呼び止めた。

「ちょっと待って」

林知恵は足を止め、問いかけるような目で女性を見た。

「井上希美よ。さっきはありがとう」

女性は手を差し出し、顔は笑っていたが、その笑みはとても浅かった。

なぜか本心から感謝していないように感じられた。

しかし林知恵は確かにこの女性を知らなかった。

それでも礼儀として、彼女は軽く女性の手を握った。

「林知恵です。どういたしまして」

「また会いましょう」

女性は手を振って去り、淡い香りを残した。

林知恵はその場に立ったまま、少し不思議に思った。

そのとき、山田さんが二つの大きなジュースを持って近づいてきた。

「どうしてぼんやり立ってるの?」

「何でもないよ。行こう」

林知恵はこの出来事を気にせず、山田さんとスーパーでの買い物を続けた。

一方、別の場所では。