林知恵と森田謙が話をしている時、狭山一美は山査子の飴を持って外に出た。
すると星奈がいなくて、彼女は冷や汗をかいた。
彼女は急いで店員を引き止めて尋ねた。「星奈はどこ?」
店員は手を上げて隣の土産物店を指さした。「また食べ物をたかりに行ったよ」
近所の人たちはみんな顔見知りで、星奈はこの通りで唯一の子供だったので、みんな彼女をかわいがっていた。
狭山一美はほっとしかけたが、通りの向こう側を見つめた。
「わぁ、超イケメン!」
「よだれを拭きなさいよ...うわ...」店員は舌打ちして言った。「本当にイケメンね、どこかで見たことあるような気がする」
「もっと新しい反応できないの?私を見てて」
狭山一美は髪を整えて向こう側に行こうとした。
店員は彼女を止めた。「パジャマ姿で行くつもり?」
狭山一美は急いで後ろに下がった。「服を着替えてくる」
店員がうなずいた瞬間、彼女の姿は消えていた。
店員は頬杖をついて通りの向こうを見て、男性の姿を眺めていた。
秋の港町はすでに寂しげで、観光客もほとんどいないため、通り全体が男性のランウェイのようだった。
優れた身長に古典的な黒いスーツが映え、気品があり長身だった。
黒い長いコートを身につけ、何故か神秘的で背筋が凍るような雰囲気を醸し出していた。
風が突然吹き、コートの裾が舞い上がり、男性は歩道を歩いて星奈の前で立ち止まった。
星奈は隣のおばさんからもらった牛乳を飲んでいたが、突然大きな影に道を遮られ、首を上げて相手と目を合わせるしかなかった。
「あなた誰?牛乳飲むの邪魔してる」
男性の冷たい目は星奈を見た瞬間、少しずつ溶け始め、体は硬直したまましゃがみ込んだが、目の前の小さな人に触れる勇気はなかった。
彼が遮っていた日光が星奈の目に落ちた時、まるですべてが明るくなったかのようだった。
夢の中の人がこうして生き生きと目の前に立っていた。
男性は声を震わせて尋ねた。「名前は?」
「花子」
星奈は大きな目をぱちくりさせながら男性を見つめた。
男性は少し驚き、眉をひそめて諦めきれずに続けて尋ねた。「お母さんは?」
星奈は考えてから、隣から出てきた狭山一美を指さした。「ほら!」
そう言って、彼女は手を振った。