第413章 五百万の半分

林知恵は今や母親となり、警戒心が強くなった。誰が好意を示そうとも、彼女は無意識のうちにその意図を探ろうとする。

彼女は森田謙の態度をそれほど気にしていなかった。ただ森田謙が医師としての責任を持って星奈をきちんと治療してくれることを望んでいた。

しかし今日、民宿で彼が彼女の気持ちを無視して部屋に入ろうとしたとき、彼女は彼への信頼を完全に失った。

だから森田謙がラブホテルに現れたとき、彼女の気持ちは大きく揺れ動くことはなかった。

今、彼女が唯一心配しているのは星奈の病気だった。

「星奈はどうすればいいの？」

車内は一瞬静かになった。

宮本深は彼女を見て尋ねた。「京渡市に戻りたい？」

林知恵はきっぱりと首を振った。「私はあそこには向いていない」

「もし私が星奈を連れて帰って治療したいと思ったら？」宮本深は続けて尋ねた。

林知恵はためらった。

確かに京渡市の医療水準は港町よりもはるかに優れており、宮本深の権力を考えれば、星奈に最高の治療を受けさせることができる。

しかし...

「私は戻れない、桑田蘭子と約束したから」林知恵は無念そうに俯き、宮本深の顔を見る勇気がなかった。「彼女からお金をもらったの」

林知恵はそれが単に桑田蘭子が保証を求めただけだと分かっていたが、確かにお金は受け取っていた。

桑田蘭子の体調は思わしくなく、彼女が戻ることは火に油を注ぐようなものだった。

彼女がどれほど冷酷に桑田蘭子の気持ちを無視しようとも、桑田剛のことは考慮せざるを得なかった。

桑田剛は彼女を何度も助けてくれたのだから。

「いくら？」宮本深は眉間をこすった。

彼は自分がいくらの価値があるのか知りたかった。

林知恵は五本の指を立てた。「五百万。でも使ってないわ、銀行に預けて利子をもらってるだけ」

宮本深は怒りと可笑しさが入り混じった表情を浮かべた。「俺の価値はたった五百万なのか？」

彼が彼女にプレゼントしたものだけでもその金額をはるかに超えていた。

五百万のために、彼女は彼を売り渡したのだ。

林知恵は唇を噛んだ。「そうじゃないわ。半分よ、もう半分は彼女が兄のために払ったの」

実際には星奈のこともあった。

しかし桑田蘭子は最終的に星奈を許したので、それはカウントしないことにした。

宮本深はそう考えると、冷笑した。「ふん、五百万の半分か」