事ここに至っては、森田謙は電話に出るしかなかった。
「橋本先生、何かありましたか?」
「森田先生、さっき誰かが星奈の過去の記録をすべて持ち出そうとしていましたが、何か知っていますか?」
橋本雲香の声には恐れの色が混じっていた。
森田謙は向かいで黙って煙草を吸っている男を見て、無理に笑みを浮かべた。「大丈夫です、すぐに病院に戻って対応します。」
「わかりました。」
電話を切ると、森田謙はすぐに立ち上がった。
「三男様、申し訳ありませんが、仕事がありますので、先に失礼します。」
「ああ。」
宮本深の冷静な態度が、かえって森田謙の心を乱し、眉をひそめながら足早にカフェを出た。
森田謙が去った後、宮本深は半分吸った煙草を消した。
立ち上がってカウンターを通りかかる時、二つのデザートを指さした。「包んでください。」