「すみません、ちょっとよろしいですか。」
声を聞いて、狭山一美は振り向いた。
まるで漫画から抜け出したようなお嬢様がゆっくりと歩いてきた。
一点の曇りもない真珠のような白いロングコート。
まるで光を放つような精緻な顔立ち。
これは林知恵の他に、狭山一美が見た二人目の比類なき美しさを持つ女性だった。
木村悦子は誰かが来たのを見て、すぐに弁当箱を置き、口と手を拭いた。
「こんにちは、もう診療時間は終わっています。」
女性は少し眉をひそめ、困ったように言った。「急にお腹が痛くなって、上司からあなたに助けを求めるといいと聞いたんです。」
彼女はお腹を押さえ、唇が少し白くなっていた。
狭山一美は親切に言った。「まずは座ってください。」
「ありがとうございます。」
女性はゆっくりと座った。
木村悦子は患者が苦しんでいるのを見て、当然助けないわけにはいかなかった。
パソコンを開いて状況を尋ねる準備をした。
狭山一美は彼が忙しいのを見て、すぐに言った。「じゃあ、先に行くね。知恵に着替えを持ってこなきゃ。」
「うん。」木村悦子はうなずき、パソコンの画面を見つめた。
女性は視線の端で狭山一美をさっと見た。
……
病室で。
林知恵は付き添い用の小さなベッドに横たわり、漫画の第一話を開いた。
画面が表示された瞬間、彼女の顔は赤くなった。
今の漫画はこんなに直接的なのか?
画面には、禁欲的な雰囲気の主人公の男性がバスタオル一枚を巻いてバスルームから出てくる姿が描かれていた。体からは水滴が垂れていた。
タオルは湿って体に張り付き、少し透けているような感じに描かれていた。
要するに、中央部分以外はほとんど見えていた。
主人公の美しい顔には不機嫌な表情が浮かんでいて、その表情は宮本深に少し似ていた。
体つきも……
林知恵は指で画面をスクロールし、そのタオルの部分を見つめた。未知の領域。
彼女は続きをめくり、狭山一美がよく言う「社長様に恋をした」的な展開を予想していた。
ところが次の瞬間、主人公の男性が縛られていた!
ちょっと待って!
章がスキップした?
林知恵はもう一度上にスクロールしたが、間違いなく同じページだった。
さっきまで厳しい表情をしていた男性が、今はヒロインに両手を縛られ、漆黒の瞳に感情が揺れ動いていた。