十五分後。
田中慎治と山田照夫は会場に戻った。
彼らが命を守る動きをしっかり覚えるまで、解放してもらえなかった。
その後、彼らは浴室に行って風呂に入り、自分の服に着替えた。
林知恵は髪を乾かし終えると、自分のバッグの横に二つの漫画絆創膏が置かれているのを見つけた。
一目で小島音芽が置いたものだとわかった。
彼女は浴室を見たが、靴紐を結んでいる狭山一美しか見えなかった。
「音芽ちゃんは?」
「もう帰ったよ。山田照夫は本当に彼女が桑田社長のことを漏らすのを恐れていたみたいで、かなり手厳しかった。歩き方もびっこを引いていたよ」と狭山一美は言った。
「一人で帰ったの?」
「うん、車を呼んだのを聞いたよ」
それを聞いて、林知恵は急いで浴室を出ると、ちょうど桑田剛が歩いてくるのが見えた。
「終わった?」
彼は林知恵の後ろを一瞥した。
林知恵は理解した。「音芽ちゃんは一人で帰りました。桑田社長、早く見に行ってあげてください」
桑田剛は言いかけてやめた。
林知恵は笑って言った。「彼女、怪我をしているみたいです。何はともあれ、人が大事ですよ」
「また会おう」
「はい」
林知恵は手を振った。
そのとき、後ろから男性の声がした。
「もう遠くに行ってしまったけど、追いかけて見に行かないか?」
林知恵はすぐに手を下ろし、振り返って言った。「いいえ、結構です。人の邪魔はしたくありません。私たちも行きましょう」
ちょうど狭山一美が出てきた。
「私は木村先生の車で帰るから、あなたたち三人家族でゆっくり話してね」
彼女は気を利かせて走り去った。
林知恵は手を伸ばして星奈を抱こうとした。
しかし星奈は宮本深にもたれたままで動かず、眉をひそめて言った。「ママ、痛い?さっきはすごく心配だった」
彼女は手を伸ばして林知恵の頬を撫でた。
林知恵は心が温かくなり、疲れた体にも力が湧いてきた。
「痛くないよ。私、すごいでしょう?一度で覚えられたの」
「ママ、すごい、いいね」
星奈は親指を立てて林知恵の額に当てた。
宮本深も負けじと言った。「僕は?」
「はぁ、あなたはもうこんなに大人なのに」
星奈はため息をつき、まるで仕方なさそうに宮本深にも軽く親指を当てた。
林知恵はそれを見て苦笑した。
宮本深も何も言えず、娘に感謝するしかなかった。