宮本深のオフィス。
林知恵が再びここに足を踏み入れた時、すでに物も人も変わっていた。
彼女は床から天井までの窓に近づき、下を見て、宮本深が見ていた景色を確かめようとした。
実際には何も見えず、すべてが空虚だった。
降り注ぐ陽の光さえもガラスを通り抜けられないかのようだった。
空っぽだった。
林知恵はめまいを感じ、すぐに目を上げた。
ちょうどガラス窓に黒い人影が素早く入ってくる姿が映った。
彼女は驚きと喜びを感じ、すぐに振り返った。
しかし見たのは急ぎ足で入ってきた宮本石彦だった。
「おじさま」
林知恵は心の中で落胆し、少し目を伏せた。
宮本石彦は心配そうに言った。「知恵、今日は危険すぎたよ。会議室にいたほとんどが老人の側の人間だ。君がそんなに強引にやれば、彼らは君をその地位に座らせておかないだろう」
「でも、なぜおじさまは会議で大騒ぎしたんですか?」林知恵は続けた。「おじさまも三男様を気にかけているでしょう?私もです」
「君は...」宮本石彦は言葉に詰まった。
林知恵は残るか去るかという議論を続けたくなかった。
彼女は話題を変えた。「おじさま、私は絶対に三男様が戻ってくるのを待ちます。だからこの5日間、三男様の仕事を一緒に処理してください」
「深の仕事は複雑で広範囲だ。君がすぐに処理できるわけがない」
5日どころか、5年あっても。
林知恵の能力では宮本深の半分も学べないだろう。
そうでなければ、老人たちがこれほど苦労するはずがない。
しかし林知恵は微笑んだ。「ご安心ください。三男様はとても賢いので、何の準備もなく私に全てを継がせるわけがありません。彼は何かを残していて、それは宮本家の他の人々を恐れさせるのに十分です」
そう言って、彼女はバッグから茶封筒を取り出した。
「...」
宮本石彦が尋ねようとした時、林知恵の目つきがおかしいことに気づいた。
視界の端で、ずっと脇に立っていた山田照夫と田中慎治が携帯を見ながら、何かを処理しているようだった。
しかし気づかれないように位置を移動していた。
宮本石彦は察して、冷静に林知恵の側に歩み寄った。
「深はいつも先を見通している。何か手を打っておいたと思っていたよ」
「おじさま、見てください...」
そう言いながら、林知恵はゆっくりと茶封筒を開けた。