第40章 彼と彼女の過去の時間(10)

家にたくさんのお客さんが来ていたので、有栖川様は応対に忙しく、前回のように有栖川涼と常盤燿子に全精力を注ぐことはできなかった。

そのため、車を停めると、有栖川涼は常盤燿子を待たずに、自分が買った贈り物を手に取り、先に車から降りて中庭へと向かった。

常盤燿子が贈り物を持って家に入った時、有栖川涼はすでに有栖川様と話をしていた。

少し距離があり、家の中は人が多くて騒がしかったが、常盤燿子は有栖川涼と有栖川様の会話をはっきりと聞き取ることができた。

「沙羅ちゃんは?」

「彼女は後ろで、友達に会ったんです。」

有栖川様に向かおうとしていた常盤燿子の足取りが止まった。彼女は周りの人々を見回し、和泉沙羅の知り合いを見つけて挨拶を交わし始めた。

常盤燿子は有栖川涼と有栖川様が別れた後で、ようやく有栖川様の前に行き、「お誕生日おめでとうございます」と言って贈り物を渡した。