第48章 見破られた策略（8）

彼が生姜茶を持って彼女を見に来たのは、きっと中村おばさんが有栖川様に彼女の体調が悪いことを伝え、有栖川様が彼を寄越したのだろう。もし彼が彼女の病気が演技だと気づいたら、きっと彼女がまた彼と二人きりになりたいと策を弄したと思うに違いない……本来なら、彼は激怒するはずなのに、なぜこんなに冷静な反応なのだろう？

常盤燿子は眉間にしわを寄せた。うつむいていたため有栖川涼の表情が見えず、彼の心中を読み取ることができなかった。彼女は少し躊躇した後、勇気を振り絞って素早く彼を見上げた。

男の顔には冷たさと無関心さ以外に、以前彼女と二人きりになった時のような激しい怒りはなかった。

もしかして、彼は部屋に入るとすぐに彼女に向かって歩いてきて、彼女の反応に気を留めなかったので、彼女が病気を装っていることに気づいていないのだろうか？そうだ……さっきは彼女が緊張しすぎて、思い上がっていたのだ。有栖川涼は彼女をあんなに嫌っていて、目の前から消えてほしいと思っているのに、どうして彼女をじっと見るはずがあるだろう？