第85章 死んだ方がいい、邪魔にならない(5)

常盤燿子は気づいていなかったわけではない。菅野千恵が「ありがとう」と言った時、自分を見つめる視線には、自分を引き裂きたいほどの憎しみが込められていた。

しかし彼女はあえて何も気づかないふりをして、菅野千恵に軽く微笑みかけ、落ち着いた態度で「どういたしまして」と返した。

このような時、彼女が平然とした態度を見せれば見せるほど、相手の心はより一層燃え上がる。

案の定、常盤燿子の予測通り、彼女が優しく「どういたしまして」と言った後、菅野千恵は怒りで肩を震わせ始めた。

高校時代から、常盤燿子は菅野千恵が損をしても黙って引き下がるタイプではないことを知っていた。

まだ時間は早いし、このままここにいれば、菅野千恵がまた何か面倒なことを起こすかもしれない。

それに、今ここを離れることは、菅野千恵に黙って損をさせることになり、怒りを発散する場もなく、心の中でより苦しむことになる。