常盤燿子は「ありがとう」と言って、服を受け取り、ドアを閉めようとしたが、また立ち止まり、大和くんに尋ねた。「彼はどこにいますか?」
「有栖川さんですか?」大和くんは振り向き、常盤燿子がいる部屋の真向かいのドアを指さした。「おそらくこの部屋にいるはずです...」少し間を置いて、大和くんは常盤燿子の質問の意図を理解したようで、続けた。「和泉さん、もしこの後お帰りになるなら、有栖川さんに一言声をかけてくださいね。」
「はい」常盤燿子は軽く頷き、袋を握りしめながら向かいのドアをしばらく見つめ、大和くんに「ありがとう」と言ってから、ドアを閉めた。
服を着替え、髪を乾かした後、常盤燿子はソファに座り、窓の外で徐々に小さくなる雨を見つめていた。そして目を閉じ、深呼吸をして、何か決心したかのように、ソファから立ち上がり、バッグを手に取り、ドアへと向かった。